アメリカの大学生にもっとも人気のある職業として、データサイエンティストが注目を集めています。しかし、日本人にとってはまだまだ馴染みがない職業であり、どんな仕事をするのか気になる人も多いでしょう。
文字から受ける印象はデータを何らかの形で活用する科学者という印象を受けますが、実際には異なります。データサイエンティストの仕事内容や必要なスキル。実際に採用している企業はどんな場所か?など解説していきます。
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データサイエンティストとは?
データサイエンティストとは、主にビジネスの課題において膨大なデータを元にデータを分析することで、事実を客観的に判断したり、未来の予測や意思決定をビジネス的立ち位置でサポートする人のことをさします。
ITだけでなく、統計や数学やビジネスを掛け合わせたスキルが求められ全てにおいて幅広い知識が求められます。
今まであまり馴染みがなかった職業ですが、この数年で飛躍的に知名度を上げ注目されています。それは企業にとってとても重要な役割を担っている、必要とされているからに他なりません。
なぜ重要な役割を果たせる職種なのにこれまで話題にならなかったかというと、データサイエンティストの仕事をするにあたっての必要なスキルが不明確であり、技術の進歩が追い付いていなかったです。
細かくは後程解説しますが、理系よりの知識だけではなく文系の知識も併せ持ち、さらに業界の知識を持っている人材がいませんでした。そのような人材を育ててまで取り組むには、費用対効果が見合わない時代が続いていました。
その状況を打破したのは技術の進歩です。具体的には、膨大なデータを扱うためには多くの計算が必要になりますがそれを行うコンピュータの能力向上。また、近年話題になっている人工分野での技術革新。大きくはこの2点の発展によって育成してもそこにかけた以上に効果を出せるようになっています。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事は本当に多岐に渡ります。最初からすべてはなかなかこなすのが難しいため、恐らく少しずつできることを増やしていく形になるでしょう。仕事をこなしながら経験を積み知識を身につけていく必要があります。
特に、元々得意なジャンルによって取り組み方が変わってきます。理系よりであればデータの収集や分析から入る方が良いですし、文系であれば可視化されたデータの分析結果からコンサルティングや戦略構築に繋げていく仕事から入る方が良いです。
それでは、データサイエンティストとして活躍していくために必要な仕事の内容を、それぞれの項目ごとに深堀していきましょう。具体的にイメージできればそれぞれ単体では難易度は高くないはずです。
データ収集・分析
データサイエンティストの根幹となるのがこのデータ収集・分析です。具体的には、今後の戦略構築や市場調査などに応じて必要なデータを収集し、分析していくことです。ここで必要になるのがドメイン知識とプログラミングスキル、数学です。
目的を達成するために分析しなければならないデータはどのようなものか?また、それはどうやったら手に入れられるのか?という仕事はとても難易度が高く、知識はもちろんですが経験による勘やコツが必要です。
また、実際にデータ分析をする際には人工知能分野の機械学習を使って、コンピュータに分析させていきます。ここで、プログラミングスキルと数学の能力が必要です。いずれも簡単ではありませんが、最初のうちは周囲と協力しながらの取り組みが必要です。
データ加工、アノテーション作成
データを分析していくためには、収集したデータをそのまま用いることはできません。コンピュータがきちんと内容を理解し、読み込んでくれるように加工をしていく必要があります。間違った読み方をされて求める結果が得られないと意味がありませんよね。
最終的な分析結果に大きな結果を与えるため、とても重要な項目です。アノテーション作成では、分析するデータがどのようなデータなのかをコンピュータが読み取れるように説明を付けていくことです。
アノテーション作成は、とても集中力が必要で負荷が高い仕事です。近年はこの作業をしなかったとしても求められる結果が得られるように技術開発もされていますが、きちんと意図した結果が得られているのかどうかを判断できる目を養う必要があります。
コンサルティング業務
これまでは理系よりの仕事内容が大半でしたが、ここからは文系よりです。コンサルティング業務では、データを分析し得られた結果を活かしていきます。コンサルティング業務には経営に関する知識やその業界に関する知識などさまざまな能力が必要です。
分析したデータをもとに、企業が生きていく為にはどのような戦略を取らないといけないのか?もっと業績を良くしていくためにはどこに注力していけばよいのか?また、どこを切り捨てないといけないのか?など、具体的なアクションへ落とし込みます。
客観的にコンサルティング対象の企業を見る必要があるため、社内のデータサイエンティストの場合には簡単ではありません。しかし、ここまできちんとやり切れる能力があれば必ず会社から重宝されるでしょう。
レポート作成
大量のデータを目的に応じて選定し、機械学習で分析できるような状態に加工し、実際に分析します。その後に、分析した結果とドメイン知識を元に企業に対してコンサルティングを行い、業績の改善や新たな市場への進出を目指します。
しかし、分析結果をそのままにしておいては社内で意思決定をする人に必要な戦略を理解してもらうことができませんし、実際にアクションに繋げられません。有効に使えれば劇的な成果をもたらせる内容だったとしても意思決定者に理解してもらえなければ意味がないともいえます。
レポートを作成すれば理解の向上に繋げられますが、データサイエンティストの分析結果は難しくなりがちなので注意が必要です。意思決定者の特性を見極めながら理解が深まるようなレポートの書き方に、説明の仕方が必要です。
データを活用できるような環境整備
今までデータサイエンスに取り組んだことのない職場では、環境整備から自身で取り組まなければなりません。具体的には高負荷な演算に耐えうるコンピュータや分析に活用するためのソフト・ツールの導入です。
まったく知識がない人からすると、なぜそんな効果なソフトやハイスペックなコンピュータが必要なのか理解できないでしょう。環境が構築できないと仕事の成果に対して大きな影響が出ますのでこだわりを持って取り組んでいきましょう。
また、自分自身が対応できないときにでも他の人が一部だけでも取り組めるように、ツールの使い方や仕事の進め方に関するマニュアルの製作なども必要です。自分しかできないことを他の人にもできるようにすることは非常に価値があり、評価に繋がります。
データサイエンティストに必要なスキルは?
確認してきたように様々な範囲の仕事をこなさなければいけないデータサイエンティストは、必要なスキルの範囲も非常に広いです。このスキルの広さがデータサイエンティストになるための高い壁となっています。
あらかじめ知識やスキルを持っている場合には、データサイエンティストになるにあたって大きな強みとなるため、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?具体的にどのようなスキルが必要になるのか確認していきましょう。
ドメイン知識
達成したい目的のために、どのようなデータを選定し分析していけばよいのか?分析した結果をどう活用していけばよいのか?という点には、ドメイン知識を持っていることが必要不可欠です。
ドメイン知識とは、自身がデータサイエンティストとして活動する企業が所属している業界に関した知識や動向です。データを分析し、その結果をもとに戦略を立てコンサルティングをしていくためには必要不可欠です。
単にデータ分析ができるだけの人材ではなく、入り口のデータ選定や最終アウトプットとしてのレポートを作成するにあたって必須のスキルです。
プログラミング能力
大量のデータを解析・分析していくには人力で対応しようとしてもとても及びません。必ず、コンピュータに頼る必要があります。しかし、データの分析方法はデータサイエンティストである自分自身がもっとも理解しているため、他の人に理解してもらうのは大変です。
機械学習のプログラムを作っていく必要がありますが、もっともスピーディーに構築していくには、他の人に依頼するのではなく自分自身でプログラムを組んでいくのが良いでしょう。後から変更したいときにも便利です。
機械学習ではPythonという言語が多く使われています。最近はいろいろな場所で学ぶことができるようになっているため、データサイエンティストを目指しているならば、一刻も早く学び始めることをおすすめします。
数学力
ここまで見てきた中で、データの分析はコンピュータがしてくれるし数学をどこに使うのかよくわからなかった人もいるでしょう。しかし、やはり数字を扱う以上は大学レベルの数学に関する知識が必要となります。
具体的には線形代数や微分積分、確率統計の知識が必要で、それはデータ分析に用いる機械学習の中でよく出てくる考え方だからです。元々理解の方にはそれほど難易度は高くありませんが、文系出身だとかなり厳しいでしょう。
既に組まれてしまっているプログラムをただ実行するだけであればそれほど必要ではないでしょう。しかし、自身でプログラムを組んで分析をしていくデータサイエンティストとして活躍していきたいのであれば必要不可欠です。
データサイエンティストになるには?
魅力的で会社の経営にも大きな影響を与えることができ、やりがいのあるデータサイエンティストですが、需要は高まっているもののどうすれば職を得ることができるのかはそれほど広く明確になっていはいません。理由は明確な資格が存在しないからです。
しかし、実は意外と選択肢は多くあり必要なスキルさえ身につけていることを示せれば採用したい企業は多くあります。実際に転職を仲介するサイトを見るとかなり多くの案件が出ていることがわかります。
独学で勉強する
必要なスキルを身につけるために、もっともリーズナブルな方法は独学です。まず最低限学ぶべき内容が明確になっているデータサイエンティストに向けて、既にいくつかの知識やスキルを身につけている場合にはおすすめです。
特に、もっとも難易度が高いと考えられるプログラミングに関してはオンラインで無料の講座を受講できる場所もどんどん増えており、ここ数年でかなり手軽に勉強できるようになりました。いくつかはスマホでも学習できます。
しかしデメリットもあり、独学では不明点が出てきたときに気軽に聞ける人がいないため、学習速度が下がってしまう可能性があります。また、強制的に勉強できる環境を構築できないと、どうしてもだらけてしまいがちです。
独学でスキルを身につけていくことを選択する場合には、意志の強さときちんと集中して勉強できる環境を整えましょう。また、計画を立て期限を定めて取り組むことで、集中力を保ったままスキルを身につけていけます。
IT企業から社内転職する
データサイエンティストの求人がもっとも多いのは、フットワークが軽く新しいことを導入するのが早いIT企業です。もし既にIT企業で働いている場合には、社内でデータサイエンティスト職にありつける可能性があります。
社内転職としてデータサイエンティストになるには、まず情報をいち早くキャッチし実際に募集が始まるまでにはきちんと根回しを進め、必要なスキルを身に付けておく必要があります。まずは学習を始めて準備をしておきましょう。
公募で必要な人材が集められる場合もありますが、主要なポジションに関しては直接指名で決まっていくことがほとんどです。決定権がある人に認知してもらっていればチャンスは大きく広がるため、関係しそうな人には良い印象を持ってもらう方が良いです。
なかなか簡単ではありませんが、新たな事業を立ち上げることを中心に行っている部署はあると思います。その部署の役職者と接触できる機会を増やしていくことが必要です。使えるものは何でも使って戦略的に狙いのポジションを得ていきましょう。
転職エージェントに行く
特にデータサイエンティストに必要なスキルを身につけていなかったり、既に身につけてしまっている場合には、転職エージェントにいくことでそれぞれの現状に合ったデータサイエンティストにつける可能性が高くなります。
まったくスキルを身につけていない場合には、報酬はそれほど高くありませんが、社内で育ててくれながらデータサイエンティストを目指していける企業が紹介されます。既に先輩がいる状態がほとんどなので、環境も整っている可能性が高くおすすめです。
また、既にデータサイエンティストとしてのスキルを身につけ実績がある人には、即戦力を求めている企業が紹介されます。この場合、自身が初のデータサイエンティスト職となる可能性も高く、難易度は高いですがその分報酬も高いです。
きちんと経験や自身の希望を転職エージェントに伝えれば、細かい情報も企業と共有することができ、自分ひとりで転職活動をするよりもミスマッチが少なくなります。また、採用決定後の待遇に関する交渉も任せられるので良い条件での転職が期待できます。
プログラミングスクールで勉強する
データサイエンティストに必要なスキルの中で、習得する難易度が別格で高いのが機械学習に用いるプログラミング言語のPythonです。比較的理解しやすい方の言語ではありますが、それでも未経験者にとっては辛いでしょう。
集中的に取り組んで身につけていくためには、プログラミングスクールに入校し教えてもらえる環境を作った上で取り組んでいくのがおすすめです。特にプログラミングは自分で悩んでもどうしても解決できないところが、知っている人は1分で解決できます。
また、プログラミングスクールでの学習実績は、講座の受講実績は自身のスキルを示す証明にもなりますので、独学の場合に比べて採用に繋がりやすいです。最近では転職希望があれば、そのまま企業との仲介をしてくれるスクールも増えています。
未経験の状態からプログラミングスクールに入校すれば、必要なスキルを習得でき企業まで紹介してもらえます。さらに場所によっては入社が決まったら学習にかかった資金を返金してくれる場合もあるので、資金がなくても取り組めそうです。
データサイエンティストの仕事の魅力
決して仕事にありつくことが簡単ではないデータサイエンティストを目指す人が増えているのはなぜでしょうか?独占資格があるわけでもありませんし、他の職種に転用しやすい訳でもありませんので、人によっては不思議に思う人もいるでしょう。
しかし、データサイエンティストの仕事には大きな魅力がいくつもあります。それは他の職種でも得られる可能性がありますが、難易度が高いのが事実です。まだ新しいこの職に関しては比較的難易度が低く実現できるのでおすすめです。
具体的には、まず若いうちから経営や戦略といった会社の意思決定に携われるような仕事をすることができます。必然的に経営層とも接する機会が多くなりますので、その考え方や仕事の進め方を目の当たりにできます。
仕事内容自体が面白いのも特徴です。会社の方針に基づいて必要なデータを収集し、自身が組んだコードを通すことで、データを分析する。その結果を元に新たな戦略や会社の方向性を立てていく。かなり面白そうですよね。
希少価値が高い職業のため、報酬が高いことが特徴であり大きな魅力の一つです。きちんとスキルを身につけられていれば、若かったとしても同年代よりもはるかに高い報酬を得られます。このような点がデータサイエンティストの魅力です。
データサイエンティストを募集している企業
元々はデータサイエンティストを募集している企業はweb系の企業やIT系の企業など、いくつかの業種に限られていました。しかしその有用性が広まっていくにつれてそれ以外の企業にも採用の動きは広まっています。
それぞれの業態によって、求められる役割や特徴が異なりますのできちんと確認してから転職活動をするのがおすすめです。思っていたのと違っていた!となってしまうのを防ぐためにはリサーチをしっかりしたいですね。
現状でも採用数が多いのはWeb系企業やIT系の企業です。採用している人数も多く職場に先輩のデータサイエンティストがいる可能性が高いので、一人で取り組むのが心配な場合にはこれらの企業へ挑戦していきましょう。
製造業では今までデータサイエンティストが活躍していませんでしたし、全体的に組織が固まっている印象があるため、周囲の理解を得るのが比較的難しいでしょう。その分、いろいろとできることがおおいため、チャレンジしたい方に向いています。
各業種ごとに具体的にどのような企業が採用をしているのか、実際に求人案件を見ながら求められる条件などを確認していきましょう。案件を見ると、それぞれどのような人材を採用したいかが分かってきます。
Web系企業
web系企業の代表格であるヤフー株式会社もデータサイエンティストの求人を出しています。必須要件にデータサイエンティストとしての実務経験は特にありませんので、他の要件さえ満たせていれば応募ができそうです。
多くのweb系プログラミング言語のいずれかで開発経験があればよいので、対象になる方は多いのではないでしょうか?社内研修や福利厚生も充実しているため、魅力的な求人案件です。
また、東証一部上場のコムチュア株式会社からも求人が出ています。社内のセミナーでスキルアップやキャリアを積みながら経験をしていけます。比較的応募条件も緩いのでチャレンジしやすいですね。
ヤフーもコムチュアも残業が全くなかったとしても一定時間分の固定残業手当がついており、それを超えた分に関しても追加支給があるなど、非常に手厚いなと感じます。休日数も多いですし、経験がそれほどなくても魅力的な企業への転職が期待できます。
大手SIer
具体的な企業名は公開されていませんが、ほぼ年齢不当で大手SIerからの求人が出ています。具体的には顧客のビジネス課題の解決や業務改善提案を実施するとなっており、データサイエンティストの中心的な業務です。
求める能力としては、過去にデータサイエンティストとして働いた経験や、ロジカルシンキングや仮説検証能力など実際の仕事を通して磨いてきたスキルが必要です。年収1000万円をねらえる魅力的な求人ですね。
製造業やweb系企業に比べると、求人案件数自体はそれほど多くない印象です。元々優秀なエンジニアが多くいるため、社内転職のような形で優秀な人材を育てていくことが多いのではないかと予想します。
企業自体が大きいため、そのほとんどが福利厚生も給与も高い水準で安定しており、即戦力として採用されるレベルであるならば、魅力的な企業ばかりです。定期的にチェックしておき、チャンスがあれば応募することをおすすめします。
コンサルティングファーム
データサイエンティストの仕事として、分析したデータを活用して今後の経営戦略などを立てていくというのは、まさにコンサルティングに通じる内容です。そのため、コンサルティングファームでもデータサイエンティストの求人が増えています。
パッと簡単にイメージしやすいものはそれほどないのですが、例えばあずさ監査法人からは医療経営コンサルタントとしてシステム開発経験やマネジメントを経験した人材が求められています。
また、でデジタルマーケティングセンターを持つ電通デジタルでは、顧客の新しいビジネスに対してコンサルティングを行うために、データサイエンティストの力を必要としています。大卒以上ではなく、専門卒でも応募できるのは魅力的です。
過去に統計学や統計解析ソフトの経験やデータ処理の経験があり、さらにコンサルティングの経験があればかなりチャンスは大きくなります。さまざまな福利厚生も充実しているため、安心して働けそうです。
製造業
製造業においてデータサイエンティストの採用もここ数年でかなり増えてきています。実際に案件を調べてみると、社名を隠している上場の大手企業も採用を進めています。
具体的に社名を公開している企業としては、センサーメーカーであるキーエンスや家電やバッテリーなどを扱うパナソニックなど、かなりの規模の企業からの採用も出ています。それ以外にも中小の製造企業も多く案件を出しています。
キーエンスの案件は、年収600万円~1149万円とかなり給与も多いですね。応募資格としてセルフサービス型BIツールを用いた経験が必須であり、ニッチな人材かもしれません。
パナソニックの案件は年収550万円~999万円とキーエンスには劣るもののこちらもかなり高い年収です。機械学習のスキルに加えて、統計処理や統計分析ツール。またTOEIC550点以上など英語のスキルも必要とされています。
英語が苦手な方はグローバル企業ではない案件を探してみると良いでしょう。